《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
次の場面は知っている場所だった。
何度も通ったいつもの酒場の客室だ。
今よりも少し若いマスター、ユージーンが誰かと話をしてる様子を一所懸命に見上げるスズラン。ウトウトと今にも眠ってしまいそうな瞳を擦り必死に耐えている。しかし睡魔に逆らえず座り込んでしまう。
幼いセィシェルがスズランを長椅子へと座らせ、肩に毛布をかけている。
普段口は悪いがそういった気遣いが出来る分、どうにも損な性格をしているセィシェルだが、何故か表情が暗いのが気にかかった。
スズランが森を彷徨い歩いている。
この場面は見なくても知っていた、ラインアーサと出会った日の記憶だろう。
当てもなく歩いているうちに、王宮の敷地に迷い込んでしまった様だ。ざわつく森の木々に怯えて遂に泣き出すスズラン。小川の畔でラインアーサとめぐり逢ったのだ。
一連の流れを知っているとはいえこうして客観的に見るとは思っていなかった為、妙な恥ずかしさが込み上げてくる。
というか直視できない。
早く通り過ぎてくれることを願った。
もしも、自分がこの時スズランに出会えていなかったら、と思うと様々な想いが胸をよぎる。
改めてこの少女の笑顔を、スズランを守りたいと強く思った。
何度も通ったいつもの酒場の客室だ。
今よりも少し若いマスター、ユージーンが誰かと話をしてる様子を一所懸命に見上げるスズラン。ウトウトと今にも眠ってしまいそうな瞳を擦り必死に耐えている。しかし睡魔に逆らえず座り込んでしまう。
幼いセィシェルがスズランを長椅子へと座らせ、肩に毛布をかけている。
普段口は悪いがそういった気遣いが出来る分、どうにも損な性格をしているセィシェルだが、何故か表情が暗いのが気にかかった。
スズランが森を彷徨い歩いている。
この場面は見なくても知っていた、ラインアーサと出会った日の記憶だろう。
当てもなく歩いているうちに、王宮の敷地に迷い込んでしまった様だ。ざわつく森の木々に怯えて遂に泣き出すスズラン。小川の畔でラインアーサとめぐり逢ったのだ。
一連の流れを知っているとはいえこうして客観的に見るとは思っていなかった為、妙な恥ずかしさが込み上げてくる。
というか直視できない。
早く通り過ぎてくれることを願った。
もしも、自分がこの時スズランに出会えていなかったら、と思うと様々な想いが胸をよぎる。
改めてこの少女の笑顔を、スズランを守りたいと強く思った。