《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 ───幼い頃からずっと考えていた。
 自分に出来る事、自分にしか出来ない事。

 父、ライオネルの様に国に、民に貢献したい。
 早く大人になりたい。そう思って来たが、それを実際に行うのはとても難しい事なのだと成長すればする程思い知る。単純に周囲を笑顔でいっぱいにする事も、漠然と何かの役に立ちたいと思う事も存外上手くいかない。
 母、エテジアーナから受け継いだこの力もどう使いこなせば良いのか。正解は誰も教えてくれない。
 ただ一つ分かるのは、今目の前にいる大切な人を救いたいと思う気持ち。その気持ちは忘れていない。

「絶対に助ける…!」

 もう幾つもの記憶の欠片とすれ違った。次第に辺り全体が明るくなってくる。しかしそこに浮かび上がった最後の場面はラインアーサにとって、目を覆いたくなるものだった。

「っ…!」

 それはつい先ほどの出来事だ。
 ハリの両腕がスズランの華奢な首に伸びている。その先で悶え苦痛に耐えるスズランの姿はラインアーサの心を掻き乱すには十分だった。

「っ…やめろ、、やめてくれハリ…!!」

 ハリが何かを叫ぶと、スズランの首に嵌っている首輪飾りが眩く光りを放つ。変形して首から外れた瞬間、光を失い床へと転がり落ちた。
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