《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「ライア…っ、まって、恥ずか…しいよ…」

「っごめん……まいったな。今まで言いそびれた分、ちゃんと伝えたいのに、言葉なんかじゃあ全然足りないんだ」

「っ…ライアばっかりずるい…。わたしだってライアのこと大好きだもん!」

「っ!」

 そう勢い良く言ったものの今度は全身を赤く染める勢いで照れて俯いてしまった。

「っあ…! あの、わたし…」

「スズラン……本当にかわいい」

「〜っ! っ…恥ずかしい…」

「俺、どうやってこの気持ちを伝えたらいいか分からないんだ。けどスズランを、君を何よりも守りたい! だから、ずっと俺の傍にいてほしい」

「うん! ……わたし、あなたのそばにいたい。ずっと傍で一緒に……だから待ってて! ライアが守ってくれたこの生命(いのち)、大切にする……ありがとうライア……」

 笑顔の花がほころぶ。
 ラインアーサの大好きなスズランの笑顔。

 ───急に視界がぼやけ始める。


(!? ……っ)

 周りの景色が次第に薄くぼやけてゆき、気が付くと元居た医務室の寝台で腕にはスズランを抱いていた。

「戻って、来たのか…?」

 即座にスズランの安否を確かめる。瞼はまだ伏せられたままだが小さな呼吸と体温を肌に感じ、緊迫していた心が一瞬にして解けていく。
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