《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 ジュストベルがラインアーサの頭上に光の陣を描く。強く輝く光が降り注ぎ、ラインアーサの身体異常を癒してゆく。どんなに強がっていても、ジュストベルにはお見通しなのだろう。

「いつもすまない…」

「そうお思いならば、これからはもう少し王子らしく後先を考えてご行動なさいませ」

「はは、お説教はまた今度にしてくれよ」

「全く、今日の所は見逃しましょうぞ。さて、一応エルベルトにも診て貰ってください。わたくしは全ての修繕を終えてから参りますので」

「ああ、ありがとうジュストベル」

 再度医務室に戻るとしっかりと体制が整っていた。スズランもハリも心配ない様だ。

「アーサ様! アーサ様も一旦横になられた方が良いかと…!」

「いや、俺は今ジュストベルに回復かけてもらったし、あとハリの事で話が…」

「おいアーサ! 無理するなって。先生の言う事は聞いておいた方がいいぞ? 話なんて後にしろよ。ほら、もうすぐスズランちゃんも目を覚ますってよ」

 スズランの顔を確認し、そっと額に触れる。頬には血色が戻り、呼吸も落ち着いている。

「良かった…」

「だろ! お前もとりあえず寝とけ」

 ジュリアンに促されて隣の空いていた寝台に身体を預けた。途端に全身の力が抜け、そのまま深く沈み込む様に意識が遠のいてゆく───。

「待って、くれ…まだ話が……」

 スズランとハリ、二人の関係性について叙説したい事がある筈なのに思考が鈍って言葉が纏まらなかった。
 耳の奥の方でジュリアンやエルベルトの会話が聞こえているが何を話しているのかも聞き取れない。眠りたくないのに、強力な睡魔に抗えずラインアーサの意識は静かに落ちていった。


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