《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
ラインアーサは寝台の上から降りるとスズランの手を取り医務室を後にする。
派手に損傷した医務室の扉と廊下の照明や窓はすっかりと元通りになっていた。あの後ジュストベルが煌像術で全てを修繕したのだろう。感謝しかない。
スズランと手を繋いだまま、照明が淡く光る廊下を抜ける。階段を登りきると普段は避けていた細い廊下に入ってゆく。
「ねえ、ライア…。どこに行くの?」
「……俺の大好きだった場所」
「大好き、だった…?」
「ん。もうすぐだよ」
突き当たりにある透かしの扉を開けると、そこは王宮の中だというのに天井ではなく空が見える空間が広がっている。大きな箱庭の様に均等に植えられた草花、手入れが行き渡っている植木。小高い丘になっている中央には大樹が堂々と根を張り、幹を伸ばしていた。
丁度真上に浮かぶ大きな満月が樹の下に影を作り、普段に増して幻想的な雰囲気を醸し出している。
「…っわあ、ここは?」
「ここは王宮の庭園の間。まあ、普通に中庭だよ」
「すごい綺麗…、素敵な所だね!」
「……ああ」
スズランが瞳を輝かせ庭園の間に踏み入る。しかしラインアーサはなかなかその一歩が踏み出せなかった。
「ライア? どうしたの?」
「……ここ…。姉上が攫われた場所なんだ」
派手に損傷した医務室の扉と廊下の照明や窓はすっかりと元通りになっていた。あの後ジュストベルが煌像術で全てを修繕したのだろう。感謝しかない。
スズランと手を繋いだまま、照明が淡く光る廊下を抜ける。階段を登りきると普段は避けていた細い廊下に入ってゆく。
「ねえ、ライア…。どこに行くの?」
「……俺の大好きだった場所」
「大好き、だった…?」
「ん。もうすぐだよ」
突き当たりにある透かしの扉を開けると、そこは王宮の中だというのに天井ではなく空が見える空間が広がっている。大きな箱庭の様に均等に植えられた草花、手入れが行き渡っている植木。小高い丘になっている中央には大樹が堂々と根を張り、幹を伸ばしていた。
丁度真上に浮かぶ大きな満月が樹の下に影を作り、普段に増して幻想的な雰囲気を醸し出している。
「…っわあ、ここは?」
「ここは王宮の庭園の間。まあ、普通に中庭だよ」
「すごい綺麗…、素敵な所だね!」
「……ああ」
スズランが瞳を輝かせ庭園の間に踏み入る。しかしラインアーサはなかなかその一歩が踏み出せなかった。
「ライア? どうしたの?」
「……ここ…。姉上が攫われた場所なんだ」