《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
そう言うとハリは立ち上がり早々と帰って行ってしまった。
「なんだよ、ハリのやつ。俺の側近とか言ってた癖に先に帰ったな」
ラインアーサは確かに酒が進むと普段よりだいぶ気が大きくなる。しかし、ここは自国だ。他国を旅して情報を集めていた頃とは状況が違い、役目を果たした以上もう必要以上に情報収集する事もないだろう。
「その位は弁えてるつもりなんだけど……まぁいいか。すいませーん! 麦酒もう一つ!」
「あ、はい!」
ラインアーサは開き直り、近くに居た若い女性の店員をつかまえて追加の注文をする。
「あと野菜たっぷりの卵のヤツも追加……って君……」
何気無く見上げた店員の顔を覗き込むと、その瞳と瞳が交わり合った。
───ほんの一瞬だったのに、長い時間見つめ合っていた様な錯覚に陥った。
淡く虹色に煌めく瞳。
抜ける様な白い肌に赤い花びらを落とした唇。
薄い千草色の髪を緩く編み、後ろで束ねている。すらりとした長い手足が露出の高い給仕服によく映える。
可憐な顔立ちが印象的な────。
間違いない、先程裏の森で出逢った女性がラインアーサのすぐ目の前に居た。
「なんだよ、ハリのやつ。俺の側近とか言ってた癖に先に帰ったな」
ラインアーサは確かに酒が進むと普段よりだいぶ気が大きくなる。しかし、ここは自国だ。他国を旅して情報を集めていた頃とは状況が違い、役目を果たした以上もう必要以上に情報収集する事もないだろう。
「その位は弁えてるつもりなんだけど……まぁいいか。すいませーん! 麦酒もう一つ!」
「あ、はい!」
ラインアーサは開き直り、近くに居た若い女性の店員をつかまえて追加の注文をする。
「あと野菜たっぷりの卵のヤツも追加……って君……」
何気無く見上げた店員の顔を覗き込むと、その瞳と瞳が交わり合った。
───ほんの一瞬だったのに、長い時間見つめ合っていた様な錯覚に陥った。
淡く虹色に煌めく瞳。
抜ける様な白い肌に赤い花びらを落とした唇。
薄い千草色の髪を緩く編み、後ろで束ねている。すらりとした長い手足が露出の高い給仕服によく映える。
可憐な顔立ちが印象的な────。
間違いない、先程裏の森で出逢った女性がラインアーサのすぐ目の前に居た。