《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「え……イリア様が…?」
「そう。スズランも見たことがあるだろ? あの、黒い空間の裂け目が……」
黒い裂け目。あの禍々しい気を放つ漆黒の裂け目、あれは紛れもなく空間移動の魔像術だ。思い出したのか、スズランが僅かに身震いをする。
「あの日、ライアが来てくれて……わたしは…平気だったけど、でも…」
「あの時は怖い思いをさせてごめんな。あれは空間をこじ開けて転移をするルゥアンダ帝国の魔像術みたいなんだ。今後もあれにスズランを巻き込むわけには行かない。絶対…!」
ラインアーサは繋いだ手を強く握った。
「……まさか、イリア様はここでその裂け目に…」
「ああ。此処でよく母上や姉上、皆で過ごす事が多かったよ。皆の憩いの場所、大好きな時間だった……それをあの裂け目が一瞬の内に壊していった」
「そんな」
「以来、此処には一度も足を運んでなくて。今日、今やっとその恐怖に打ち勝とうと思ってる所。スズランが一緒なら怖くない、大丈夫って思って…」
口に出した途端気恥ずかしくなり心が浮つく。
「ライア…」
「実際はその後すぐに父上がこの王宮全体の結界を強化したんだ。特にこの庭園の間には強力な結界が張ってあるから一番安全な場所でもあるんだけど」
「…わたし、あの大きな樹の所に行ってみたい。一緒に行きたいな!」
「そう。スズランも見たことがあるだろ? あの、黒い空間の裂け目が……」
黒い裂け目。あの禍々しい気を放つ漆黒の裂け目、あれは紛れもなく空間移動の魔像術だ。思い出したのか、スズランが僅かに身震いをする。
「あの日、ライアが来てくれて……わたしは…平気だったけど、でも…」
「あの時は怖い思いをさせてごめんな。あれは空間をこじ開けて転移をするルゥアンダ帝国の魔像術みたいなんだ。今後もあれにスズランを巻き込むわけには行かない。絶対…!」
ラインアーサは繋いだ手を強く握った。
「……まさか、イリア様はここでその裂け目に…」
「ああ。此処でよく母上や姉上、皆で過ごす事が多かったよ。皆の憩いの場所、大好きな時間だった……それをあの裂け目が一瞬の内に壊していった」
「そんな」
「以来、此処には一度も足を運んでなくて。今日、今やっとその恐怖に打ち勝とうと思ってる所。スズランが一緒なら怖くない、大丈夫って思って…」
口に出した途端気恥ずかしくなり心が浮つく。
「ライア…」
「実際はその後すぐに父上がこの王宮全体の結界を強化したんだ。特にこの庭園の間には強力な結界が張ってあるから一番安全な場所でもあるんだけど」
「…わたし、あの大きな樹の所に行ってみたい。一緒に行きたいな!」