《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 すると何故か突然にスズランが吹き出した。かと思えば瞳を輝かせながらラインアーサの髪に着目している。

「っふふ、ライアの髪。ふわふわの大きな猫みたい…!」

「大きな猫!?」

「うん! なんだか可愛い。触ってもいい?」

「可愛いって……触るくらいいくらでも良いけど。ああ、でも邪魔だな。今度切らないと」

 力を解放した影響か、急に腰のあたりまで伸びてしまった髪を肩の後ろに流す。

「あ、そうだ! 長いのも素敵だけど…、切るまでの間こうしない?」

「こうって?」

 スズランが自分の髪をサッと編んで見せた。

「ね! こうしたら少しは邪魔にならないでしょ?」

「あ、ああ。じゃあお願いしようかな」

「まかせて!」

 背後に回ったかと思えばスズランはものの数秒でラインアーサの髪を編み終えた。髪の先は彼女が愛用している髪留めで留めてある。

「慣れてるのか? すごいな…、それにこの髪留めって…」

「ライアとおそろい(・・・・)で嬉しい!」

「そっか…。似合うかな?」

「うん!」

 慣れない髪型に多少照れるも内心嬉しさでいっぱいになる。お揃い、とにこにこと満足気に微笑むスズランがとても可愛らしく、自然と口元が緩む。

「ありがとな、スズラン」

「えへへ、どういたしまして」

「ああ。そういえば首元、寂しくなってしまったな…」

 ふと目に入ったスズランの細い首筋が白く浮き立つ。
< 525 / 529 >

この作品をシェア

pagetop