《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 セィシェルはスズをラインアーサから隠す様に立つと、思い切り睨みつけてくる。思わずラインアーサも睨み返した。

「……っ」

「何だよ……あんた。またスズにちょっかい出す気か? 余計な事したら今度こそただじゃあおかないからな」

「また? 余計な事、だと?」

「セィシェル…。何のこと?」

 ラインアーサは余計な事をしただなど微塵も思っていないが。

「スズは気にしなくていい。あの時はまだ小さかったから覚えてないだろ? こいつのせいで大変だったんだ……それに前に教えただろ、変態でロリコンっぽい男がいるって話」

 ほぼ聞こえているがセィシェルがそう耳打ちすると、スズの表情が一瞬強張った。途端にラインアーサを見る視線が怯えた物に変わる。その眼差しに、ラインアーサは頭をがつんと打ち付けられたような衝撃を受けた。今のはどう考えても嫌われたに違いない。

「っ…おいちょっと待て! 俺はロリコンでもなければ、変態でもない! 何を勝手な事…」

「どーだか! スズにあんな事をしておいて…。それにあんた四、五年前にうちの店でよく何人もの女に囲われてただろ。まるで女を侍らせるみたいにしてんの何度も目撃したしな」
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