《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
四、五年前と言えば───。
確かにラインアーサはこの酒場に何度も足を運んでいた。その時こそ本当に情報収集が目的で来ていたのだ。地方や他国出身だという女性とよく酒の席を共にした。国内に居ては掴めない事物。地方や他国からもたらされる有力な情報の為ならば、一夜を共にした女性も何人か居たのは認める。
当時のラインアーサは行方不明の姉の居場所を探るためならば、どんな些細な事でも把握する為の手段を選ばなかった。おそらくセィシェルはその時期の事を覚えていて言っているのだろう。
「とにかくこいつは女好きの変態には違いないだろ! スズには絶対に近づかせない!」
「…っ!」
「……でもセィシェル、注文はどうするの?」
それでもまだラインアーサを客として扱おうと、スズが目線を合わせてきた。しかしそれも一瞬でそらされてしまう。
「……じゃあ、それ食べたら帰ってくれ」
セィシェルは乱暴にそう言い捨てると、スズの手を強引に引きながら店の奥へと戻っていく。ラインアーサは何も反論出来ず、ただ二人の後ろ姿を眺めていた。
「……」
「───ねぇお兄さん。旅の人?」
唐突に背後から声を掛けられる。
確かにラインアーサはこの酒場に何度も足を運んでいた。その時こそ本当に情報収集が目的で来ていたのだ。地方や他国出身だという女性とよく酒の席を共にした。国内に居ては掴めない事物。地方や他国からもたらされる有力な情報の為ならば、一夜を共にした女性も何人か居たのは認める。
当時のラインアーサは行方不明の姉の居場所を探るためならば、どんな些細な事でも把握する為の手段を選ばなかった。おそらくセィシェルはその時期の事を覚えていて言っているのだろう。
「とにかくこいつは女好きの変態には違いないだろ! スズには絶対に近づかせない!」
「…っ!」
「……でもセィシェル、注文はどうするの?」
それでもまだラインアーサを客として扱おうと、スズが目線を合わせてきた。しかしそれも一瞬でそらされてしまう。
「……じゃあ、それ食べたら帰ってくれ」
セィシェルは乱暴にそう言い捨てると、スズの手を強引に引きながら店の奥へと戻っていく。ラインアーサは何も反論出来ず、ただ二人の後ろ姿を眺めていた。
「……」
「───ねぇお兄さん。旅の人?」
唐突に背後から声を掛けられる。