《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 スゥ……スズ…。
 どうやらスズとはラインアーサの〝アーサ〟と同じく愛称だった様だ。

「スズランか、綺麗な名だな。色々教えてくれてありがとう。俺はライアだ、えっと君は?」

「どういたしまして。あたしはエリィよ」

 エリィは食台に肘をつき、首を傾げて意味深にラインアーサの瞳を覗き込む。その仕草と視線にはたっぷりの色気があり、ラインアーサもその意味が分からない訳ではない。

「……」

「ちょっとぉ、そんなにあの子の事が気になるの? あの子、まだお子さまじゃあないの」

「お子さま? 彼女は成人してないのか?」

「あの子まだ歳は十五なんですって! まぁ……確かに見た目は少し大人びてるわね、でも見てると中身はまだまだ可愛いのよ」

「十五!? そ、そうなのか…? 俺はてっきり十八、九位かと…」

 ラインアーサは本日何度目かの衝撃を受けた。

「やぁね、お兄さん……せっかく誘ってるのに。そんな風に上の空だと話にすらならないじゃあない。今日の所は諦めてあげる、またね」

 そう言い残しエリィは去っていった。
 その後勘定を済ませ酒場(バル)を出るとやはり店内との温度差は激しく、ラインアーサはマントを羽織り暖をとった。
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