《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
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「ライア、……ライア! いつまで寝てるんです? 早く起きて陛下の執務室へ行ってください」
寝室の扉を何度も叩く音で目が覚めた。昨日はなかなか寝付けなかったのだから、もう少し寝かせておいて欲しいのだが。どうやらそうさせては貰えないようだ。
「……入りますよ?」
扉が開き早足の足音と共に、ハリが素早く寝室のたれ絹と窓を開け放つ。一気に新鮮な朝の光と風が室内へと入ってくれば、嫌でも覚醒する。
「……んん、ハリか。お早う」
「暢気に挨拶も良いですけど、早く身支度をして陛下の執務室へ。相変わらず朝に弱いですね。それとも二日酔いで?」
まだ頭が冴えないが、二日酔いというほどではない。
「あー、大丈夫みたいだ。支度したら直ぐに父上の執務室に向かうよ」
「では、私も執務に戻りますので何かありましたら呼んでください」
「ああ……」
ハリはそれだけ言い終えると、素っ気なく部屋を出て行った。
鈍い思考を切り替える為、浴室で熱めの湯を全身に浴びる。動きやすい服装に着替えると食堂で軽く朝食を取り、その足でライオネルの執務室へと向かった。