《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~

「お早う! アーサ!!」

 ライオネルの執務室を訪れるなり力強く抱擁され、ラインアーサはたじろいた。

「父上は朝から元気だな」

「ん? アーサは元気じゃあないのかい? 昨日は遅くまで戻らなかったそうだが何か心配事かい…?」

「いや、そういう訳じゃあ……」

 昨晩遅くまで酒場(バル)に出向いていたことは既に筒抜けらしい。

「アーサは存外、他人のために無理をする所があるから父様は心配なのだよ? その性格は母様譲りだな…。早く何処かの素敵なお嬢さんを連れてきて婚約発表でもしてくれると少しは安心なのだがね」

 唐突に振られた婚約の話に辟易(へきえき)したラインアーサは、少々強引に話題を変えた。

「……父上と姉上はあの後、母上の墓前に花を捧げてきたってコルトから聞いたよ」

「イリアが行きたがっていたからね。それと、例の話は真実なのだね?」

「ああ、オゥ鉱脈都市は滅んでいない。十一年もの間、姉上を保護してくれていた。復興に向けて地下に都市が広がっているんだ。俺も地下都市を目の当たりにして驚いたよ! 内乱前から密かに計画していたみたいなんだ」

「そうだったのか。そんな事も知らずに、私は本当に申し訳ない気持ちだよ……」
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