《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 ───オゥ鉱脈都市はひっそりと生きていた。
 元よりシュサイラスア大国の傘下であるオゥ鉱脈都市。その領主一家のローズ家とは交流が深く親族の様な間柄だ。
 内乱時、その領主一家全員の命が狙われた。都市に火を放たれ、領主 アルマンディと長男のブラッドフォードは惨殺されたとの情報が入った。オゥの民は一方的に攻撃され、傷付き亡くなった者も多く、シュサイラスアでは沢山の避難民を受け入れた。領主の妻、ルチアと次男のカルセディはどうにか保護する事が出来たが、都市は壊滅状態。実質的に滅んだと思われた。
 ブラッドフォードは、ラインアーサにとって実の兄の様に慕っていた存在であり、イリアーナとは当時から恋仲にあったのだ。

「……父上」

「ローズ家には多大な負担をかけてしまった」

「でも……ブラッド兄様は無事だった。当時は瀕死状態にあったけど姉上が懸命に看病して今は後遺症も残ってないと言っていたよ」

 イリアーナは〝風の息吹(アイレ・アリェント)〟を使った癒しの煌像術(ルキュアス)が得意だ。それを駆使しブラッドフォードの命を救ったのだろう。

「二人は今でも愛し合っているのだね?」

 ラインアーサはライオネルと瞳を合わせ深く頷いた。

「ブラッド兄様が生きてると知れれば、また命の危険に晒される可能性がある」
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