《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
突き付けられた現実から逃げたい……。ラインアーサはとにかくその場から離れたかった。
───母・エテジアーナの部屋から。
途中、自身の足元を取られて思い切り地面に倒れ込んだ。口の端が切れ、血の独特な味が口の中に広がる。それでも構わず、すぐさま起き上がると無我夢中で走った。
気がつけば、城壁の横手にある庭の端まで来ていた。いつも無意識にここへ来てしまう。此処はラインアーサのお気に入りの場所。庭を抜けるとすぐ脇には湧き水を水源とする小川を挟み、王宮を囲む様に小さな森が広がっている。
その森の中でも一際大きな樹の上に秘密基地の様な物を作り、何かある度にそこへ息抜きをしに来ていた。しかし今日はその秘密基地に行く気力もなく小川の畔に座り込み項垂れる。
「……何やってるんだろ、俺」
小川のせせらぎや、いつもと変わらぬ小鳥の囀りを聞いていると、昂ぶった気持ちと上がった息が徐々に落ち着いてきた。陽の光が小川の流れに反射し煌めく。
ラインアーサは眩しくてその光から瞳を逸らした。
───母・エテジアーナの部屋から。
途中、自身の足元を取られて思い切り地面に倒れ込んだ。口の端が切れ、血の独特な味が口の中に広がる。それでも構わず、すぐさま起き上がると無我夢中で走った。
気がつけば、城壁の横手にある庭の端まで来ていた。いつも無意識にここへ来てしまう。此処はラインアーサのお気に入りの場所。庭を抜けるとすぐ脇には湧き水を水源とする小川を挟み、王宮を囲む様に小さな森が広がっている。
その森の中でも一際大きな樹の上に秘密基地の様な物を作り、何かある度にそこへ息抜きをしに来ていた。しかし今日はその秘密基地に行く気力もなく小川の畔に座り込み項垂れる。
「……何やってるんだろ、俺」
小川のせせらぎや、いつもと変わらぬ小鳥の囀りを聞いていると、昂ぶった気持ちと上がった息が徐々に落ち着いてきた。陽の光が小川の流れに反射し煌めく。
ラインアーサは眩しくてその光から瞳を逸らした。