《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
ラインアーサは掌に風を集め、その風をスズランの指先に向かってそっと吹きかけた。
暖かくそよぐ風に、傷が癒されてゆく。瞬く間に傷が塞がり、スズランの華奢な指先は元通り綺麗になった。
「……なおった…の?」
「ん、一応治したけど……帰ったら念の為消毒した方がいい」
「……あ、の……どうして治してくれたの?」
スズランと瞳が合う。
美しく煌めく瞳に、今は怯えも感じられない。
「お前さ……なんで俺にだけそんな冷たいの? 俺、何かした? 礼ならいらないから教えてよ」
今なら素直に話してくれるだろうか。
「だ、だって、セィシェルが……あなたに近づいたらだめって。あぶないから……」
危ない!? セィシェルはどの様にラインアーサの事を話して聞かせているのだろうか。無性に腹が立って来た。だがセィシェルに対する苛立ちよりも、スズランの無防備な表情と先程から鼻先を擽る花の様な香りがラインアーサの判断を狂わせる。
「……危ないって、どんな風に?」
「え?」
スズランの少し呆けた様な顔を見つめていたらどうでも良くなって、無意識にその唇に手を伸ばしていた。
「例えば、こうとか?」
暖かくそよぐ風に、傷が癒されてゆく。瞬く間に傷が塞がり、スズランの華奢な指先は元通り綺麗になった。
「……なおった…の?」
「ん、一応治したけど……帰ったら念の為消毒した方がいい」
「……あ、の……どうして治してくれたの?」
スズランと瞳が合う。
美しく煌めく瞳に、今は怯えも感じられない。
「お前さ……なんで俺にだけそんな冷たいの? 俺、何かした? 礼ならいらないから教えてよ」
今なら素直に話してくれるだろうか。
「だ、だって、セィシェルが……あなたに近づいたらだめって。あぶないから……」
危ない!? セィシェルはどの様にラインアーサの事を話して聞かせているのだろうか。無性に腹が立って来た。だがセィシェルに対する苛立ちよりも、スズランの無防備な表情と先程から鼻先を擽る花の様な香りがラインアーサの判断を狂わせる。
「……危ないって、どんな風に?」
「え?」
スズランの少し呆けた様な顔を見つめていたらどうでも良くなって、無意識にその唇に手を伸ばしていた。
「例えば、こうとか?」