《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 その動揺を隠す様にラインアーサは咄嗟に、売り言葉に買い言葉の如くセィシェルを嘲笑った。

「へぇ。子供(ガキ)同士お似合いじゃあないか……安心しろよ、俺は年下は好みじゃあないんでね」

 だがすぐにこれは負け惜しみだと自分でも分かった。これは堂々と気持ちを相手に伝えたセィシェルに対する、悔し紛れの空威張りだ。

「そんなこと言っても信じるもんか。あんた、何時だってスズを目で追ってる癖に……自分で気づいてないのか!? 本当にそう思ってるならもううちの店に来るなよ、迷惑だ!」

 やはりもうこの酒場(バル)に通うのはスズランにとっても迷惑だろう……。

「ああ、俺はこの酒場(バル)にはもう…」

「二人とも、わけわかんないっ!!」

 この酒場(バル)にはもう来るつもりはない。そう告げようとしたが突然スズランが叫ぶ様に声をあげた為かき消された。怒っているのか俯いたまま肩を震わせている。

「スズ!?」

「なんで二人が喧嘩するの? ……わたしが迷惑かどうかなんて、わたしが自分で決めることだわ!」

 スズランの言葉にはっとする。
 全くその通りだ。周りがどう口出ししようと、決めるのはスズラン本人なのだから。
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