《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「っ……何だよ、これ……」

 心の中に渦巻く感情……これは嫉妬だ。
 ラインアーサは初めて嫉妬と言う感情を知り、胸が焦げ付いてしまうかと思った。同時に、真っ直ぐスズランに気持ちを伝えたセィシェルが羨ましかった。咄嗟の強がりは何の効果もなく、唯の負け惜しみ。
 無防備で真っ白で、何色にも染まっていない。弱々しいかと思いきや、自分の意見を明確に主張出来る不思議な少女。

 スズラン。もう一度会って、話して、自分のこの気持ちを確認したい。

「いや……もうだいぶ、重症じゃあないか」

 強く、それでいて繊細な気持ち。
 ラインアーサは額に手をあて、空を見上げるも瞳を閉じた。ひんやりとする風が吹きつける。燻っていたラインアーサの心の炎は消えるどころか煽られてますます強くなっていた。


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