《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「へ? ……誰かって誰?」

「……だから! 誰かいい人よ」

「いい人なら俺の周りはいい人ばかりだけど? ハリも父上もコルトも、もちろん姉上も」

 ラインアーサのとぼけた返答に、イリアーナは盛大に溜息をついた。

「もう…! そうじゃあなくって、好いている異性の事よ! 若しくは気になる異性は居ないの?」

「っ!! げほっ……何だよ突然!」

 突然そんな話題を振られて、ラインアーサは焼き菓子を喉に詰まらせた。

「アーサって意外と天然だわ。ますます心配よ……」

「そ、そんな事姉上に心配されなくても大丈夫だよ。姉上こそ、ブラッド兄様とはどうなってるの? 二人はとっても仲が良さそうに見えたけど?」

「え!? あの、、ブラッドとは、その…」

 ラインアーサが話題を切り返すと、イリアーナの顔がみるみる赤く染まってゆく。

「知ってるよ、昔からブラッド兄様と姉上が想い合ってる事。もちろん応援してる。────今、父上がオゥ鉱脈都市の再建の手続きをしてる。もしかしたら都市(ウルブス)でなく公国(テッラ)として一から再建だって出来るかもしれない。そしたら姉上は公妃(レイナ)だね」

 ラインアーサはさらりと微笑み、イリアーナを困らせた。
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