《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
ラインアーサは残った手作りの焼き菓子を一つずつ包んでもらい、自室へと持ち帰った。
「明日ハリにも分けてやろうかな、姉上の焼き菓子はやっぱり絶品だ」
すっかり夜も更けていたが、まだ眠る気になれなかったラインアーサは寝室の出窓に腰を掛け、蒸留酒の入った杯を傾けていた。
月の光が照明を落とした部屋へ射し入り影を作る。強めの酒は一気に廻り体温を上昇させた。
「やっぱり一人で飲むのは味気ないな……ああ、そうだ。もしかすると…」
不意にある事が頭を過る。
酒場で毎日の様に会っていたあの人物。特徴を思い出してゆくと、ある一つの〝可能性〟に居ても立っても居られなくなった。しかし酒場は既に閉店の時刻を迎えている。しかもあの酒場にはもう行かないと決めたばかりだった……だが、どうしても会って確かめたい事がある。致し方ないので少し日を置いて店の前で〝待ち伏せ〟すると言う妥協案に辿り着く。
そうして、漸く眠気が降りてきたラインアーサは大きく欠伸をしながら何気なく窓の外を眺めた。眼下には城壁の外側にある横庭とあの森が月明かりに照らされ真、夜中の静けさを演出している。その景色を一通り眺め、溜息を吐いた。
気を抜くとどうしても浮かべてしまう。
「明日ハリにも分けてやろうかな、姉上の焼き菓子はやっぱり絶品だ」
すっかり夜も更けていたが、まだ眠る気になれなかったラインアーサは寝室の出窓に腰を掛け、蒸留酒の入った杯を傾けていた。
月の光が照明を落とした部屋へ射し入り影を作る。強めの酒は一気に廻り体温を上昇させた。
「やっぱり一人で飲むのは味気ないな……ああ、そうだ。もしかすると…」
不意にある事が頭を過る。
酒場で毎日の様に会っていたあの人物。特徴を思い出してゆくと、ある一つの〝可能性〟に居ても立っても居られなくなった。しかし酒場は既に閉店の時刻を迎えている。しかもあの酒場にはもう行かないと決めたばかりだった……だが、どうしても会って確かめたい事がある。致し方ないので少し日を置いて店の前で〝待ち伏せ〟すると言う妥協案に辿り着く。
そうして、漸く眠気が降りてきたラインアーサは大きく欠伸をしながら何気なく窓の外を眺めた。眼下には城壁の外側にある横庭とあの森が月明かりに照らされ真、夜中の静けさを演出している。その景色を一通り眺め、溜息を吐いた。
気を抜くとどうしても浮かべてしまう。