《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「っ…スズラン…?!」
彼女の事ばかり考えていたので、その幻覚でも見たのかと思った。しかし側に近づくにつれてスズランの持つ甘い香りが仄かに香り、幻では無いのだと判る。
「だれ…!? もしかして……警備、さん?」
「…! っ何故、こんな時間にここへ来た? 夜の森は冷え込む上に危険だ。早く戻った方が良い」
まさかの返答に咄嗟に警備隊らしく振る舞うもスズランは困惑気味にラインアーサを見つめ返す。
「……えっと。警備さん、どうしてわたしの名前知ってるの?」
しまった。初対面の時に名前を聞きそびれていたにも関わらず、先程ラインアーサは堂々と名前を呼んでしまったのだ。
「……先日、酒場に出向いた時に名前を知ったんだ。突然馴れ馴れしく呼んで悪かったな」
咄嗟にそれらしい理由を述べる。
それに、嘘は付いていない。
「あ、ちがうの! びっくりしただけ…。それより、お店に来たなら声を掛けてくれれば良かったのに! 警備さんならたくさんおまけしたんだけどな」
どうやらスズランは今のラインアーサに全くと言っていい程警戒心を見せない様だ。いくら暗がりとはいえ〝ライア〟と〝警備員〟は同一人物だと分かってもおかしくはない筈だ。
彼女の事ばかり考えていたので、その幻覚でも見たのかと思った。しかし側に近づくにつれてスズランの持つ甘い香りが仄かに香り、幻では無いのだと判る。
「だれ…!? もしかして……警備、さん?」
「…! っ何故、こんな時間にここへ来た? 夜の森は冷え込む上に危険だ。早く戻った方が良い」
まさかの返答に咄嗟に警備隊らしく振る舞うもスズランは困惑気味にラインアーサを見つめ返す。
「……えっと。警備さん、どうしてわたしの名前知ってるの?」
しまった。初対面の時に名前を聞きそびれていたにも関わらず、先程ラインアーサは堂々と名前を呼んでしまったのだ。
「……先日、酒場に出向いた時に名前を知ったんだ。突然馴れ馴れしく呼んで悪かったな」
咄嗟にそれらしい理由を述べる。
それに、嘘は付いていない。
「あ、ちがうの! びっくりしただけ…。それより、お店に来たなら声を掛けてくれれば良かったのに! 警備さんならたくさんおまけしたんだけどな」
どうやらスズランは今のラインアーサに全くと言っていい程警戒心を見せない様だ。いくら暗がりとはいえ〝ライア〟と〝警備員〟は同一人物だと分かってもおかしくはない筈だ。