《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 それでも即座に無表情を張り付け、咳払いをするとなるべく低い声を出してスズランに謝罪した。

「……いや、笑って悪かった。そうだな、一般的に、ね。基本は同じ、男も女も関係ない。状況にもよるだろうが、愛しいと思うから相手の唇を奪う。当たり前の事だ」

「……そう、なの?」

「少なくとも、俺はそうだよ…」

 その答は自分自身の心にも染み渡る。
 スズランは頷きながら小さく何かを呟いたが、ラインアーサの耳には届かなかった。

「ん? 今何か…」

「ううん……ありがとう。教えてくれて」

 スズランが何を考えているのか、ラインアーサとの口づけをどう思ったのかが気になる。しかしその答えを聞く勇気はない。

「……スズラン。冷えるからこれを」

 ラインアーサは羽織っていたマントを脱ぎ、スズランの頭からふわりと被せて纏わせた。

「わぁっ!? そんな事したら警備さんが風邪ひいちゃうよ! わたしなら平気なのに」

 マントから顔を出しラインアーサを少し困った様な表情で見上げるスズラン。

「いいから……戻るまで着ててくれ」

「だって、これは…」

 その顔を真っ直ぐに見ることが出来ず、やはり瞳を逸らしてしまう。
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