《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
ラインアーサは上着の懐へ一つ忍ばせていたイリアーナの焼き菓子を思い出し、そしてそれをスズランへ手渡した。
「これを。戻ったらあたたかい飲み物と一緒に食べるといい。元気が出る」
「……これ、お菓子?」
「俺の姉の手作りだが、味は保証するよ」
「ありがとう! とってもおいしそう!!」
これ以上スズランと話していても、ますます想いは募るばかりだろう。もう誤魔化すことの出来ないくらいラインアーサの気持ちは大きくなりつつある。ならばこれ以上会わない方が良いのかもしれない。
「さあ、そろそろ戻るんだ。そのマントは返さなくていいから…」
「そんな……ちゃんとお洗濯して返すよ。だからまた、ここで会える?」
「いつも此処に居るとは限らない。今日は偶然居合わせただけだ」
スズランが橋の欄干から立ち上がり顔を覗き込んでくるが、ラインアーサはつい愛想のない言葉を返してしまう。その瞬間、スズランが少し泣きそうな表情を浮かべたのでラインアーサの心臓はどきりと跳ねた。
「……いつでもいい。気長に待つ事にするよ」
「よかった……もう会えないのかと思った。わたし、警備さんともっとお話ししたいの。あ、警備さんが迷惑じゃなければだけど」
「これを。戻ったらあたたかい飲み物と一緒に食べるといい。元気が出る」
「……これ、お菓子?」
「俺の姉の手作りだが、味は保証するよ」
「ありがとう! とってもおいしそう!!」
これ以上スズランと話していても、ますます想いは募るばかりだろう。もう誤魔化すことの出来ないくらいラインアーサの気持ちは大きくなりつつある。ならばこれ以上会わない方が良いのかもしれない。
「さあ、そろそろ戻るんだ。そのマントは返さなくていいから…」
「そんな……ちゃんとお洗濯して返すよ。だからまた、ここで会える?」
「いつも此処に居るとは限らない。今日は偶然居合わせただけだ」
スズランが橋の欄干から立ち上がり顔を覗き込んでくるが、ラインアーサはつい愛想のない言葉を返してしまう。その瞬間、スズランが少し泣きそうな表情を浮かべたのでラインアーサの心臓はどきりと跳ねた。
「……いつでもいい。気長に待つ事にするよ」
「よかった……もう会えないのかと思った。わたし、警備さんともっとお話ししたいの。あ、警備さんが迷惑じゃなければだけど」