《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「わ…っ!?」
前のめりにふらついた瞬間、左の頬の辺りにあたたかな物が触れる。柔らかい感触……。それがスズランの唇だと理解するまで数秒かかった。
「っ…!!?」
ラインアーサが唖然として立ち尽くしていると、スズランが悪戯そうな表情を浮かべた。
「あ、あのね。これって親愛の印なんだって…! あいさつみたいな物だって教わったの。だから、おやすみなさい警備さん!」
そう言うなり、スズランは全速力で森の中へと走り去ってしまった。ラインアーサのマントを引きずりそうになりながら───。
完全に不意打ちだった。
ラインアーサは予想していなかった突然の出来事にその場へ屈み込んだ。
「……っなんだよ、今の…?」
そのままの状態から動けずラインアーサは石橋の上で暫く項垂れていた。
親愛の印、挨拶。恐らくセィシェルあたりがスズランに教え込んだに違いない。ではセィシェルの彼女に対する想いは親愛の情なのだろうか。ラインアーサに対する異常な迄の敵対心は……あの瞳は。
「あれは親愛の情なんかじゃあない……恋愛感情だろうが…!」
前のめりにふらついた瞬間、左の頬の辺りにあたたかな物が触れる。柔らかい感触……。それがスズランの唇だと理解するまで数秒かかった。
「っ…!!?」
ラインアーサが唖然として立ち尽くしていると、スズランが悪戯そうな表情を浮かべた。
「あ、あのね。これって親愛の印なんだって…! あいさつみたいな物だって教わったの。だから、おやすみなさい警備さん!」
そう言うなり、スズランは全速力で森の中へと走り去ってしまった。ラインアーサのマントを引きずりそうになりながら───。
完全に不意打ちだった。
ラインアーサは予想していなかった突然の出来事にその場へ屈み込んだ。
「……っなんだよ、今の…?」
そのままの状態から動けずラインアーサは石橋の上で暫く項垂れていた。
親愛の印、挨拶。恐らくセィシェルあたりがスズランに教え込んだに違いない。ではセィシェルの彼女に対する想いは親愛の情なのだろうか。ラインアーサに対する異常な迄の敵対心は……あの瞳は。
「あれは親愛の情なんかじゃあない……恋愛感情だろうが…!」