《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 先程のラインアーサに対するスズランの行動は、純粋に挨拶替わりとしてのものだろう。しかし理由はどうであれ、スズランから口づけをされたのはこれで二度目になる。
 〝おまじない〟と称して口元に唇を寄せてきた幼いスズラン。思い返すとあの時、スズランは何らかの〝癒しの煌像術(ルキュアス)〟を使ったのだ。当時の、幼い頃から既にラインアーサの傷と痛みを、しかも一瞬で治すことのできる煌像術(ルキュアス)を使えた筈だ。

「……雷花の神気(トニトフロース・ディオス)

 そう呟いてから、ふと疑問が浮かぶ。
 幼いスズランが使った煌像術(ルキュアス)は電気の様な刺激を伴う物だったと記憶していた。その〝力〟が使える者はリノ・フェンティスタでもごく一部に限られている。 だが高度な煌像術(ルキュアス)を多用し、扱う者には到底見えないスズラン。潜在的に強い力を持っていても、それを行使する為には知識や技術を磨く必要がある。
 ラインアーサも例外では無く、幼い頃から専門の指南役に様々な知識を教授されてきた。力を管理するには一般的に教育機関へ通うのが通例だが大体が王族であり、能力を活かした職に就く者が利用する場合が殆どだ。
 恐らくだが、スズランはそれを受けていないが為に上手く煌像術(ルキュアス)を扱えないのだろう。

「彼女は、雷花の国から来たんだろうか……」
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