15歳、アンタとワタシ
「…おい、サキコ」
幾年も聞いている聞き慣れた声が聞こえ、体を声の方に向ける。
「何やってんだよ、受験生」
「アンタだって受験生でしょうが…」
アラタは、私のすぐ後ろに立ち、秘密基地を見ながら、勉強も十分にしてなく、志望校も決めていない私に嫌味ったらしく“受験生”という単語を投げかける。
「こんなとこで油売ってる暇はないんじゃないの?」
アラタは昔から意地悪く私を元の道へと引き戻す。
初冬の放課後、確かに志望校も決めていない私が薄暗くなった公園にいることは滑稽だろう。
「…家、帰りたくなくて」
「おじちゃんたち、まだ言い争ってんの?」
確信をつく言葉に静かに頷くとアラタは「あーあ、お前も大変だな」と大きく伸びをしながら言う。
「別に、さ。離婚するならすればいいんだよ。自分のやってることを正当化しながら、サキコの為に離婚は〜とか、反吐が出る」
嫌なことを話すときに饒舌になるのは、私の癖だ。
アラタもそれは分かっているから、あえて何も言わずにブランコに腰掛ける。