ずるい人






「…類君、今日はありがとう。
なんか、まだまだなんだよね~…

私の演技…」



今日は思わず類君に愚痴ってしまった。




類君は私のほうを見て、

「そんなことないと思うけど。

俺だって、腹からじゃなくて喉から声出しちゃうから発声がなってないってよく怒られるし。」



と励ましてくれた。




あの席を譲る譲らないの一件からそんなに進展はしていないのだけど、前よりはお互い話すようになった。




類君の言葉に、少し気持ちが浮上する。



「ああ~、喉いてぇ。

やっぱ喉から声でてんだろうなぁ。」



彼にも、悩んでいることはあるらしい。


「のど飴は?」


「昨日買ったわ~。」



こうやって彼がフランクに話すときは、オフモードなんだと思う。



そんな一面を私に見せてくれるのは、なんだか嬉しい。










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