ずるい人
まあ、また電車の中では無言になるわけだけど。
《次はー***駅ー》
もうすぐ私が降りる駅。
相変わらずの無言だけれど、今日の沈黙は、なんだか心地良かった。
駅に着き、ドアが開く。
「じゃ、また明日。」
前までは、私のほうをチラリとみて小さくじゃあ、と言うだけだったのに。
「また明日。」
そう言って、私に手まで振ってくれた。
少しずつ。
少しずつだけれど、私たちの距離は近づいているのかな。
帰り道、私の顔はきっと、見られたものじゃないほど緩んでいただろう──。