ずるい人
─────…
「明日、ついに本番か…」
今日は、電車がトラブルにより遅れているみたい。
何時もよりも長い待ち時間に、私は思わず明日のことを話題にした。
「俺、緊張してお腹いたい。」
「え、もう?(笑)」
一瞬冗談かと思ったんだけど、様子を見るかぎりどうやら本当らしい。
「…大丈夫だよ。
あんなに練習してきたんだもん。」
これは、確信をもって言えること。
類君は、ふぅ、と一息吐いて、
「そうだよね。」
と言った。
緊張は未だ伝わってきたけど、でもどこか、大丈夫だと思える。
「…」
「…」
そして、無言になる。
遅れてきた電車はやっときて、私たちは乗り込んだ。