ずるい人
電車に乗ると、席が横一列空いていた。
ラッキー♪
そう思って座ったとき。
ついこの間まで角の席の壁に寄りかかっていた類君が、私の隣に座った──。
言ってしまえば、たったそれだけのことなのだけれど。
私の胸は、急速に高鳴った。
彼は、たいして気にした様子もなく、腹減った~、と呟く。
……女の子がドキドキする行動をとる類君は、無自覚だからたちが悪い。
こんなんじゃ、私の心臓が持たないよ…
隣に人が座ると、こんなに下に沈むんだなあ。
なんてのんきなことは言ってられなくて。
類君の肩が触れる。
こんなに近いのは初めてで。
私は必死で話題を探した。