ずるい人
私が、話題を必死に探していたその時だった。
「ねえ。」
ドクン…
類君が不意に声を上げた。
類君から話題を振ってくることは珍しい。
私の心臓は跳び跳ねた。
類君に聞こえてるんじゃないだろうかと思えるほど、ドキドキいってる。
それでも平静を装おって、
「何?」
と聞いた。
「明日、頑張ろう、ね…」
こっちをみて、少し笑ってそう言った。
一瞬、ポカンとしたけど。
「うん!」
そう答えた。
なんか重要な話なのかな。とか。
私のこと気にしてくれてるのかな。とか。
そんな期待なんてどうでもよくなった。
だって、類君が、頑張ろうねって言ってくれた。
類君の声を、こんなに近くで聞くことができた。
そしてまた、類君の笑顔を見ることができた──。
私は、明日の文化祭に向けての気合いが、一気に高まった気がした。