ずるい人
「えっ、類君…?」
類君は私の肩から頭を起こして私をみた。
「好きって言ったの、俺が本気だって言ったらどうする?」
私の脳は完全フリーズ。
数秒間止まって、やっと言葉の意味を理解した。
今日の類君は、どこか大人っぽくて。
私は慌てた。
「それはつまり…」
「俺は、お前のことが好き。」
類君の目は、真剣だった。
だけど…
「…ずるいよね、類君は。」
「え?」
「優しくなったと思ったら、急にそっけなくなったり、みたことない表情私に見せたり…
いつも、いっつも私を振り回して。
私がどんな気持ちで類君のこと見つめてたかなんて、分からないでしょ?」
類君は、突然喋りだした私を、驚いた表情でみている。
考えてみれば、類君にこんなに感情をぶつけたことなんて一度もない。
「それで、最後は『本気だって言ったらどうする』?
そうやって私の反応伺って…
私だってどうしていいか分かんないよ!!」
車内に私の声が響く。
「ごめん。」
うつむき、類君はそう言った。
その一言で、私は我に返った。