俺しかいない



「ねぇねぇ、ヤドカリさんは

どうして殻の中に住んでるのかなぁ?

年はいくつだと思う?

足は何本?

子どもはいるかな?

海で溺れないのかなぁ?

どんな風に世界を見てるのかな?」








突然機関銃のように問いかけてきた桜ちゃん。




───…





俺は唖然とした。







「翔くんだったよね?」




俺は口を開きっぱなしの顔を桜ちゃんにのぞきこまれた。



「え…あ、うん、翔でいいよ」




反射的に答えた俺。




桜ちゃんは今度は遠くの海を見つめて独り言のように問いかけてきた。


「海って綺麗。

どうしてつながってるのに綺麗なところとそうでないところがあるの?

水はどうして青く見えるんだろう?

人が水の中で住めないのはなぜ?
海から吹く風ってどうしてこんなに気持ちいいの?」





そう言って両手を広げる桜ちゃん。







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