俺しかいない
桜
俺は桜を寮の前まで送ったあと、
美里たちとの約束を思い出して
また海へと足を運ぶ。
すでに美里は腕組みして待っていた。
「おっそーい!
で、どうだった?桜?」
「桜って相当な不思議っ子だったんだな」
「やっぱ分かるかぁ~
そうなの。
あの子素でああだから。
はぁ…
困ったもんよ…」
「そんなに困んの?」
「いやいや!
あの性格は可愛いじゃん?
翔もそう思ってるでしょ?」
俺はすぐさま頷いた。
初め、桜の性格を知ったとき驚いたのは本当だ。
まさに開いた口がふさがらない状態…
でも、俺の中でそれがますます魅力的に感じられてきてしまうのだ。
「ちょっとね、最近気になることがあって…」
美里はうつむいてしまった。
気になること?
なんだろ…
──あれ?
そういえば華世ちゃんいなくね?
「美里、そういえば華世ちゃんは?」
「ああ、あの子バイト行った。
華世は頑張ってるからね~」
バイトかぁ~
「で、その気になることって言うのは?」
俺は美里に問いかけたが、その時の美里の顔は、ものすごく深刻な表情になっていた。