俺しかいない
美里はうつむいたまま話し出した。
「桜ね、この間彼氏とのデートから帰ってきたとき、頬に痣作って帰ってきたの…
それでお願いがあるんだけど──…」
…
へ!?
「っていうか、桜って彼氏いんの!?」
俺はそっちの方にびっくりした。
てっきり桜はフリーなのかと…
じゃあ、俺は人の女をかっさらおうとしてたってことになるのか!?
「黙っててゴメンっ!
でもね、私と華世からのお願いっていうのは…
桜を翔の彼女にしてあげてほしいの!!」
はァ!?
俺は口を金魚のようにパクパクさせた。
「そ…れって
俺が…桜の二股相手になれってこと…なのか!?」
俺の思考はネジの抜けた機械のように、ピタリと停止してしまった。