俺しかいない
「違うの!!
翔、よく聞いてね。
桜の彼氏は歳上で、今確か…
二十四歳なの。
一年前から付き合ってて…」
にっ、二十四!?
俺はさらに驚かされた。
「それでね、その彼とデートする度に、桜…朝帰りなの。
あの子、自分の考えはあるんだけど、ぽーっとしてるし…
心配で、話聞いてみたんだ。
そしたら…
ヤらされてるみたいで…
この間なんか縛られて目隠しされたって」
は!?
ヤらされてる…
二十四の男にか!?
「それって…SMプレイとかいうやつ…」
俺が恐る恐るきくと
「たぶん…暴力も…
私、もう会うなって言ったんだけど
好きだから会いたいって…」
美里の声がだんだんとくぐもっていく。
俺の顔はだんだんと険しくなり、怒りがふつふつと湧いてきた。
今日初めて会っただけの桜だけど…
他人事とはとらえられない。
「俺…何かできるかな?」
何か…
何かあの子にできることをしてあげたい。
「今は…桜の本当の気持ちも分からない。
本当は恐怖から好きだって言ってるのかもしんないし…
だから、翔には見守ってあげてほしい。
私たちだけじゃ力が足りないから」
「分かったよ。
俺にできることあったらなんでも言えよ!!」
っていうか
今からその男の所に乗り込みたいくらいだけどな。
「ありがとっ」
美里の顔に少しだけ光が射し込んだように見えた。