俺しかいない
寮を出て、聖華学園までの距離は歩いて五分。
だから、宝星寮の前は人がうじゃうじゃ。
主に男だけど。
「ふぁ~ぁ」
俺はおもいっきり欠伸をした。
夏祭りっつっても桜がいなけりゃつまらんだろ。
そう、桜はこの日、彼氏との約束があるのだと美里から聞いていた。
勿論心配ないわけないのだけれど…
今の俺にはどうすることもできない。
一度しか会ったことのない人を恋愛対象として見る人なんてそうそういないだろう。
俺は別として…
それに、後夜祭には戻ってくるとも聞いている。
その時が桜と話ができる唯一のチャンスだ。
それまで俺はかなり暇ってわけだ。