〔BL〕透き通った嘘


ズキッ


「…っいた、」

左頬が痛む。
そのたびに俺は、弟を思い出す。

俺はしゃがんで、下を向いた。


「おにーちゃん、どうしたの…?」

不意に声がして、顔を上げると目の前には男の子がいた。

「あ…」

確か、402号室の…

「いや、何でもないよ。」

「でも、ほっぺた痛そうだよ?」

「…あぁ、これは…」

痛くない、痛くないと思えば思うほど、傷が痛む。

「…おにーちゃん?」

「これは…
ちょっと、ある人に殴られてね…」

いやいや、何言ってんだ俺。
…ま、いいか。

子供はこんなの気にもとめないだろうし。

「殴られたって、パンチ?」

「そう、パンチ」

「なんでパンチされたの?」

「さぁ、俺にも分かんないな。」

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