〔BL〕透き通った嘘

「…どうして、いままでだって腐るほど嘘を付いてきたのに…

今更、なんで…!?」

芹沢が来てから、うまく自分を偽れなくなったような気がする。

「俺は…、なぜ…」

なぜ嘘をつけなくなった?
芹沢のせい?

どうして、芹沢が近くにいれば俺に戻るんだ?

もう、疲れた…

「なにも、考えたくないのに…
考えたら駄目なのに…」

考えれば考えるほど、自分が辛くなるだけだ。

騙して、嘘ついて、偽らなければ。

そうすれば俺は…もう、傷付かない。


「そうだ…
人が怖い、なんて…

そんな俺は、誰も望まない…
必要としない…

もっと、もっと隠さないと…!」


俺は、でかいだけの椅子の上で、バカみたいに小さくなってひざを曲げた。

かかえたひざのあいだに、顔を埋める。


そうして、一人静かに溜息をついた。

< 147 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop