〔BL〕透き通った嘘
偶然
───────…
「それじゃあ、今日はこれで───… 」
今日の仕事はもう終わった。
なかなか佐藤… 院長に会えないし。
散々だ。
…って、何で僕は院長に会いたいんだろうか。
佐藤に関しての僕の気持ちは、よくわからないことばかりだ。
「あっ、芹沢さん!」
「なんでしょう?」
看護士さんに声をかけられる。
「今夜、芹沢さんの歓迎会をもくろんでるんです。
空いている人捕まえて、いま久子が駆け回ってますから。」
久子?
ああ、朝注意された院長派の人か。
「すみません、気を使わせてしまったみたいで。」
「いいんです、こちらこそすみません。
ご家族とか、いらっしゃったりするんですか?」
家族、かぁ…。
「僕に家族はいません。」
「そうなんですか…!!
それじゃ、結婚…」
「してませんね。」
そして彼女には悪いが、する気もない。