〔BL〕透き通った嘘


「他人は俺のことを『成長した』と言う。

だけど、俺はこんな成長望んでなんかいなかった…!

思うようにいえなくて、息が詰まる。

だから芹沢。


俺はオマエを恨むよ。

なんであの時殺してくれなかったのか、ってね。」


「佐藤…」


「…いや、芹沢にあたるのもおかど違いか。」


佐藤はひどく、やつれた顔で笑った。




「芹沢…いや、芹沢さん、明日のオペ、頼みましたよ。」



そう言うと、店を出ようとする佐藤。



「佐藤、待て!」


「まだなにか?
  ・・
芹沢さん。」


「…佐藤、院長は、よくこういったお店に来られるんですか。」


僕の質問に、さっきの《ミキ》という人が答えた。


「ひいきにしてもらってます~!

とくに、アタシなんか…ね?」


意味ありげに笑った。



「…そういうことだ。」


「…っなんで!!」


「芹沢さん。

…世の中、巧くやった者勝ちですよ。」


佐藤はそう言った後、ニコッと笑って帰っていった。






佐藤の後に、僕も店を出る。


なんだか、不思議な





すっきりしない夜だった。




< 83 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop