◎☆ Margaret*
「真衣は覚えているか?」

「何を?」

「去年の元旦のときのこと。」
たまに話す、真衣との思い出。
わたしは何も知らなくて心が痛いんだ。
喉の奥が少し苦くなる。

「えー覚えてないわ。私何かした?」

「あの時は何とかしてでも年明け
一番に真衣に会いたくてね。
初詣に行こうと何度も誘ったんだ。
でも真衣は寒いからって、
面倒だって断るんだ。」

「そんなこともあったね。」
知らない、知らないよその思い出。
那由太さんの記憶とわたしの記憶。
重なる記憶なんてほとんどない。

きっとわたしならその誘い断らないよ。
わたしならすぐにだって会いにいく。

「真衣を誘えなくて俺が落ち込んでると
真衣は意地悪い顔で笑って言うんだ。
“1年の初めくらいは
2人きりで過ごしたいでしょう?”って。
本当に真衣にはいつも振り回される。
でも俺はそんな真衣が大好きだった。」

そんなことがあったんだね。
わたしと真衣はやっぱり違う。
わたしはそんなこと言えない、
そんな考えを思いつくことすらないよ。

那由太さんの好きな真衣と
わたしとではかけ離れすぎて苦しくなる。

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