◎☆ Margaret*
「那由太、おはよう。
いつも那由太が暇だ暇だって嘆くから、
今日は折り紙を持って来てあげたよ。」

「折り紙なんていつぶりだろうな。」

なんて笑う那由太さんの横顔が
あまりにも綺麗で、見とれてしまう。

はっとして我に返って、
引き出しの着替えを入れ替える。

そろそろこれじゃ寒いのかな、なんて
考えられる喜びに浸っていた。

「目が見えないと、難しいな。」
ふと振り向いてみる。

そこには折り紙を四苦八苦して
折ろうとする那由太さんが居た。

那由太さんの手元にあるのは
ぐしゃぐしゃになった折り紙。

申し訳無くなった。

…わたしは馬鹿だ。

目が見えないのに折り紙だなんて。
傷をえぐるようなものじゃないか。
せっかく何の弱音も吐かずに毎日
前向きに失明と向き合っているのに。
わたしは最低だ。

そんなつもりで折り紙を持ってきた訳じゃ
なかったけどわたし考え無さ過ぎだ、
自分の最低さに落胆する。

「ごめん、那由…っ」
泣きたくないのに涙がこぼれる。
自分の無力さに、悔しくなる。

那由太さんは寂しそうに笑って言った。

「不思議だ、真衣の泣き顔がわかる。
頭の中に浮かんでくるよ。」

「…っ」

「泣かないで、俺は大丈夫…」

きゅっと抱き締められた。

中学生の時のあの温もりが蘇った。

ずっと欲しかった温もりはここにある。

またこんな風に抱き締められるなんて
思ってもいなかった、無理だと思ってた。
嬉しくて、嬉しくて、涙が溢れる。


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