『華國ノ史』
「幼少期」
例えばそれが偶然であったとしても、皆はそれを奇跡と呼ぶだろう。
例えそれが奇跡であっても、夢想家は運命だったと。
運命だったとしても、当人達は自分達が死力を尽くした必然だと語る。
そして私のような現実家は、これを歴史とした。
彼とその兄弟は決して恵まれた環境に産まれたとは言われない。
またはその逆で恵まれているのだと主張する者も少なからずいた。
私も同じくそう思う。
全てに始まりがあるように、彼の始まりは実に幻想的であったに違いない。
それが尾ひれの付いた伝承や、狂人の誇張された虚言であったとしても、人はそれらを肯定するだろう。
殆んどの者は幼少期に無償の愛を受ける。
彼にとってもそれは当然の権利であっただろう。
愛を送る者によって、環境によって人は変わっていくのだろう。
私の様に長くはない短い一生だからだろうか、個が他に、人が人に対して与える影響は小さくない。
短くはあるが精一杯、それを輝かせる為に生きる人間が時に思いがけない成長を見せる事に、私はいつも驚かされる。
【華國史】第参巻
~星の魔法使いの章~
後書きより