『華國ノ史』
 ピエロは飛び出してきたセブンに微笑みかけた。

ピエロ
「魔法都市は楽しいぞー!」

セブン
「魔法使いになれるんだよね?」

ピエロ
「君ならその上の大魔法使いになれかもよー?」

セブン
「魔法使いなんて面白そうだなー、ねえ行ってもいいでしょ?」


「私や家族と当分会えなくなるのよ?」

セブン
「文字を習って手紙を書くよ」

 笑顔のセブンに母は激昂した。


「そんなに行きたいなら勝手にしなさいっ!人の気も知らないで!」


 セブンはそんなに怒った母を見たことが無かったので気後れしたが、服の裾を握り絞めて言い返した。


セブン
「だっだって僕が行かないと、お父さんやお母さんに迷惑が掛かるんでしょ?」

 セブンは涙をこらえていた。

セブン
「兄ちゃんやじいちゃんにも、僕のせいで!

 僕が悪いんだ!僕、行きたくないよ…」
 
 
 セブンは遂に大声を出して泣き出した。

 
 母は直ぐに駆け寄りセブンを強く抱き締めた。


「お前は俺の自慢の息子だ。
 
 どこに行こうとも誇りに思う」

 
 母はセブンが心の底では我慢していたのに気付き、気丈にも心配をかけまいとした我が子が愛しくてたまらなかった。
 
 
 本当に辛いのはこの子なんだと悟った。



「あんなに小さかったのに、立派になって」


セブン
「僕、きっと立派な魔法の人になって、帰ってくるから」


「もう私の可愛い魔法使いよ、あなたは」

 
 ピエロは愛情深い家族に今までに無い心を揺さぶられていた自分に気づいた。


ピエロ
「普通は出世コースで喜ぶんだが。

 ふむ、この俺が感動するとはね。
 
 不思議な魔法ばかりを使う子供だ」



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