『華國ノ史』
 死神は油断していた。


 彼の想像を軽々と越えていた。


 セブンの右手からは凄まじい速さで連続して魔法の矢が無数に放たれ続ける。

 
 通常のマジックアローよりも遥かに威力が高い魔力の矢が逃げる死神を猛烈に追って行く。

死神
「なんで!こんな小僧が!

 しかし、これしき!」

 死神は逃げるのを止め、両手で魔法の障壁を出しそれらを受け始めた。


 凄まじい勢いで魔法障壁にぶつかる魔法の矢の中にセブンは数本爆発する矢も混ぜていた。


 それは強い光を放ち死神の目を眩ませた。

 
 更に数本の矢は大きく曲がり背後から迫った。

 
 それを寸でで察知した死神は両手を広げ球状の障壁を張って絶え続けた。


死神
「ぐおおおー!」

 死神は内心焦っていた。

 長く生き、年齢の概念が欠如してはいたものの、分不相応な相手、魔法。

 
 初めて見る強力で止むことのない変幻自在で罠も交えた攻撃。

 
 しかも、それに加えてフォロフォロが口をこちらに向けていたのだ。

 
 龍は最後の力を振り絞り巨大な火球を放つ。

 
 それは死神に直撃し、後ろの建物が崩れる程の大爆発を起こした。

 
 死神の障壁は衝撃に耐えきれず、崩れ去り、残りの矢が死神を襲った。

 
 魔法の矢は音を立てて死の象徴を散々に地面に叩き落とし、打ちのめした。


 地に落ちた死神は怒りと苦痛のあまり奇声を発し、

 辺りを爪で滅茶苦茶に切り裂いた。


 しかしその声は突然止む事になる。

 
 積層の剣舞

 
 ウルブスが得意とするその複合呪文をセブンはしっかりと受け継いでいた。


 青年が広げた両手に煌めくのは

 
 ドラゴニュートが鍛え上げた名剣

「折れる事を知らぬ頑固者」

 そして

 神話にまで登場する
 正義の王が振るったとされる魔法剣
 

「希望の剣」

 
 2つは同時に交差し死神の首を落としていた。

 
 静かでいて美しくも見える決着。

 
 その光景に思わず瀕死の龍が目を見開き賛辞を送った。

フォロフォロ
「…ミゴトナリ」



 
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