『華國ノ史』
 死期の近い龍に青年が駆け寄り片膝をついた。

セブン
「フォロフォロ様…」

 最早助からぬであろうドラゴンにどう声を掛ければいいのか青年は分からなかったのだ。


フォロフォロ
「トモヨ、オボエテイルカ?」


 ズルズルとドラゴンの尾が姿を表した。


 先端の鱗は全て無くなっていて、変わりに鎖かたびらが着せられていた。


 バルテスの訓練所で特訓していた龍の尾がそこにあった。


フォロフォロ
「フフフ、ナカナカ、

 ユウシュウナ、セイトダ。

 コウチョウデアル、ワタシモ、

 ハナガタカイ」

 セブンはうつむき涙を流していた。

 小さい頃から見守られていたのだ。

 この龍とは長く苦楽を共にしていたのだ。

 さらに今度は命に変えて守ってもくれた。

 そう思うと涙が止まらなくなってきた。


フォロフォロ
「ナミダヲ、ナガシテクレルノカ?

 シュゾクノチガウ、オイタ、ワタシニ…

 ナラバ、

 ニクタイハホロブガ、ココロハ、

 オマエトトモニ、アロウ。

 サラバ、トモヨ。

 シカシ、ナツカシイ」

 フォロフォロから抜け出た暖かい光がセブンを包んだ。

 耳元であの声が聞こえる。


「…トナエヨ、サスレバ

    ワレハ、ヒヲ、フカン」

 
 青年を包んでいた光は次第に離れ、赤く光る魔法都市の上空を旋回し始めた。

 
 龍の魂は青年の声を待っている様だった。


 セブンは渾身の魔力を注ぎ天に右手を付き出す。

 
 そして彼は言われた通りに唱えた。


「我が友の息吹よ蘇れ!
 
  灼熱の渦よ逆巻き唸れ!
  

     …フレイム・カノン!」


 雲を貫く炎の柱は、友であった龍への送り火であった。


 それを見た全ての者は、偉大な巨龍の魂が聖地へ帰ったのだと感じた。
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