『華國ノ史』
 父はその夜、セブンの為に極上のステーキを用意するべく牛舎に向かった。

セブン
「マッドイフリート食べちゃうの?」

 
マッドイフリートと呼ばれた牛は盛大に暴れている。


「この暴れ牛食ったら力がつきそうだろ?」

セブン
「僕、こいつカッコ良くて好きなんだよなー本当は優しいんだよ」


マッドイフリート
「ンモー!ブウフーー!」


セブン
「今日は母さんの鳥シチューが食べたいからやめよう?」



「いててて、お前いつか食ってやるからな!セブンに感謝しろよ!」

 
 暴れ牛に手を焼き、ステーキは諦めるしかないようだ。
 
 
 父はいつもより甘えてくるセブンに何もしてやれない自分が腹立たしかった。

 
 その晩の食卓は何時もより豪勢になった。
 
 
 父はとっておきの酒とチーズを出し、祖父は丸々太った鳥を買ってきた。

 
 皆は悲しさを紛らわす為に会話を重ね、楽しい一時を過ごした。

 
 ピエロの話では大人になるまでは戦闘には出ないらしく、それを聞いた兄達はセブンを勇気づけた。


トール
「じゃあ戦いに出るまでに強くなってりゃいいんじゃね?」


マッチョ
「てか逃げるの専門の魔法覚えときゃいいんじゃね?」


「そうね、そうしなさい」


「空を飛んで帰って来い!」

祖父
「魔法都市燃やしたら帰って来れるぞ」

ピエロ
「皆さん反国家発言は止めましょう」


トール
「てかこのピエロをじいちゃんがやっちまえばいいんじゃね?」


祖父
「こいつ、奇術使いの道化って通り名があるぐらい強いぞ。

 まあわしの時代じゃヒヨッ子だったが」


ファット
「見えねー弱そー、じいちゃんは?」


ピエロ
「第三師団の菫(すみれ)騎士団って有名だったよ。

 騎士道騎士団って有名さ」


セブン
「やっぱヤメヨーかな、ピエロ弱そうだし」

トール
「やっぱ男は肉弾戦だろ」


セブン
「僕お父さんみたいな農家になりたかったのに」


「セブン…」

セブン
「お母さんみたいなお嫁さんも欲しいし」


「セブン…」

セブン
「じいちゃんみたいなじいちゃんも欲しいし」


祖父
「セブン…どういう事じゃ?」

 
 楽しい夜は直ぐに名残惜しさを残し更けていく、星は一層光輝いていた。






 
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