『華國ノ史』
 煮え湯を飲まされたボーワイルドは怒りに震えていた。

ボーワイルド
「やってくれるじゃないか」


煌皇兵
「守備兵は全滅、艦隊は半数近く使用不可です」

ボーワイルド
「動ける艦に風魔法使いを集中させろ、動かぬ船を牽引させる。

 敵が艦隊戦を挑んできたら切り捨てるがな。


 守備兵をけちったのが不味かったのか、それとも私の予測を上回る何かがいるのか?」


煌皇軍
「後方、魔法都市偵察兵の早馬です!」


偵察兵
「申し上げます!お喜び下さい!

 ドラゴンは死んだもようです。

 尚、四人ほどが馬に乗りそちらに向かったようですが…

 しかしこれは…」

 偵察兵は燃える船に気付き途方に暮れた。


ボーワイルド
「なぜそれをすぐ本隊に連絡しなかった?」

偵察兵
「ドラゴンですか?」

ボーワイルド
「四人の事をだ!

 本隊の斥候も一体何をしていたのだ!

 無能な部隊長は全て降格だっ!

 戦場では情報が何より武器になる。


 少数の魔法使いが戦況を幾度もひっくり返してきたのを知らんのか!」


 怒りに燃える将軍の姿に偵察兵は死を覚悟した。

ボーワイルド
「偵察部隊、斥候部隊は死ぬ気で船をこがせろ、部隊長もだ。


 本国に帰還すればその罪を許す」

偵察兵
「はっ!命に変えて漕ぎます!」

ボーワイルド
「これ以上被害を受ければ本国には帰れんぞ!

 帰還する!急げ!」


 浜を埋め尽くす煌皇軍の兵士達は急ぎ撤退準備に取りかかった。

 
「しかし、たった四人でこれを?

 まさかな、いや…」

 ボーワイルドは一物の不安を感じていたのだった。
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