『華國ノ史』

華に囲まれた街

 セブン達が白だけの浜から魔法都市に帰ると、

 国境である山脈の関所から派遣された騎士団の部隊が救援に駆け付けていた。

 
 先駆けて来た彼らは魔力を持たぬ一般の飛行部隊であった。


 華國の有する騎士団の中でも早さを重視する事で有名である。


 手遅れと思われていた魔法都市の救援にいち早く向かうと言ったのがこの部隊であった。


騎士
「団長のナッツと申します。

 ウルブス殿、いつもご勇姿を拝見しておりました」


 団長のナッツによると都市は延焼により八割程破壊され、

 救援出来た者は怪我人を含め二百と少しであった。


 魔法都市の人口はおよそ五千人であった。

ナッツ
「これ程の虐殺、無念でなりません」

ウルブス「王には?」

ナッツ
「既に王都に向け伝令を、皆様も王都へお送り致します」

セブン「まって」

ミニッツ&セコンド
「俺達は後で行きます」

ウルブス
「ということですので、ではナッツ殿、宜しくお願いします」


ナッツ
「は?まあそう仰られるなら」


 何人かの住人達はその場を離れる事を拒み、

 死者の埋葬と叶わぬであろう街の再興を目指した。


 セブン達はカピパラ寮に向かった。

 
 不可視の料理人は鍋を片手に寮の前で待ち構え、

 セブン達を見ると待ってましたと直ぐ様料理に取り掛かった。


 最後の手料理を振る舞った料理人に街に残る人を頼むと伝えると、

 彼女は寂しげにフライパンを鳴らし答えた。

 
 四人は料理人に別れを告げ、扉を開く。

 
 カピパラの涙により辺りは一面水浸しになり、

 枯草の庭には池ができ、光が底を照らしていた。


 街に行くとドラゴンが這い出た城跡はは大きく窪み、通りは瓦礫で溢れていた。


セブン
「敵に情報を与えない為、

 フォロフォロ様の上に魔法使いの街を築いたんだっけ。

 でも、寂しいな」

ミニッツ&セコンド
「あれ、ケイロン様じゃないか?」


 更に歩くと四人が大きくえぐられた坂で何かを探しているケイロンに気づいた。

 
 自慢のコレクションが崩壊に巻き込まれてしまったようだ。

 
 此方に気付くと掘り起こすのを休み、肩を落としため息をつくケイロン。

ケイロン
「年寄りには骨が折れる。

 しかし、諦める事も出来ん。

 私のコレクション全てを合わせれば私より長生きなのだからな。


 そうだ、これを華國王に渡してくれ」

 
 セブンが受け取ったのは一巻きの皮で出来た書簡であった。

 






  
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